**今日の夜ごはん**
今日も、女の子はお母さんの足元に立って、料理をするお母さんの手をじっと見詰めていました。
「おかあさん」
少し手を止めたのを見計らって、女の子はお母さんを呼びました。
お母さんは女の子に気付くと、再び動き出そうとした手を止めて女の子に顔を向けました。
「なあに?」
お母さんが聞くと、女の子はお母さんが使っていた、白いまな板を指して言いました。
「今日の夜ごはん、なあに?」
女の子が聞くと、お母さんは優しく微笑みました。
「さあ、なんでしょう? 当ててごらん」
そう言うと、お母さんは女の子を抱き上げて、まな板とその周りに並べた材料を見せました。
だいだい色のにんじん、
白いたまねぎ、
うすーい黄色のジャガイモ、
そして、お母さん手作りの、真っ赤なトマトジュース。
「これを使う食べ物は、なんでしょう?」
女の子は材料と睨めっこして、少しの間考えました。
そして、何度かうーんうーんと唸った後、ポンと手を叩きました。
「あっ、わかった!」
女の子は言うと、お母さんの腕を抜け出して、すぐ近くにある調味料の入った棚から、四角い平たい箱を取り出しました。
「カレーライス!」
女の子が取り出した箱は、カレールーの箱でした。
リンゴとハチミツの絵が描かれた箱を持って、女の子はキラキラと表情を輝かせました。
実は、カレーライスは女の子の大好物なのです。
お母さんは、そんな女の子に微笑みかけると、かがんで女の子と視線を近づけました。
「あったりー!」
「やったー!」
お母さんが女の子の目の前に、透明な花丸を作ってあげると、女の子はますます嬉しそうに笑って、バンザイをしました。
その日の夜は、お母さんの愛情がたっぷり入った、暖かいカレーライスを、家族みんなで食べました。
おしまい
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