事件から一週間が過ぎた。
私が犯人であると明かしてから、周りから色々と言われることもあった。
しかしそれも、星来達や赤間が守ってくれたおかげですぐに収まり、今では平穏を取り戻しつつある。
以前とそれほど変わらないように見える日常だが、変わった事もある。
「希恵ちゃん、遊ぼう」
休み時間になると、星来達が私を遊びに誘うようになったのだ。
最初はぎこちなく対応していたが、最近はだんだん慣れて、挙動不審になる事も少なくなった。
「何するの?」
「かくれんぼ」
訊くと、星来はいつもの笑顔を湛えて答える。これがいつものやり取りだ。
ほんの二週間ほど前まで、このような会話を出来るとは夢にも思わなかった。何となく嬉しくて、思わず頬が緩む。
「何?」
「何でもないよ」
星来が訊ねてきて、私は答えると彼女を抜いて階段に足をかけた。
「隠れるのは得意なの」
にやける顔を誤魔化すように言うと、星来は私に追い付き口角を上げる。
「私も、探すのは得意なの」
星来の対抗するような言い方に、私はにやりとした。
「じゃあ、勝負だね」
「負けないよ」
「私だって」
こんな風に、言い合える相手ができるなんて。
階段を駆け下りながら、私は今ある幸せに感謝した。
外に出ると、眩しい日の光が校庭を明るく照らしていた。
日陰から出れば、陽光がじりじりと肌を焼く。しかし、不思議と嫌な感じはしない。
むしろ、もっと感じていたい。そんな気持ちになる。
「早くー、始めるよ!」
目を閉じて光を感じていた私に、星来が声を張り上げる。いつの間に追い抜いたのだろう、彼女は既に、校庭で他の皆と合流しているではないか。
「はーい!」
私は、大声で返事を返すと駆け出した。頬を撫でる風が心地良い。
「星来ちゃん、あのね」
私は星来に駆け寄って、夏物の薄い袖を抓むと彼女に耳打ちした。
「……へぇ」
星来はよく分からないと言うような顔で、私を見た。私はよく説明もしないまま星来に笑いかける。
「これは、すごい事なのよ」
『私、夏が好きなの』
それはきっと、この先ずっと続いていく。
‥END‥
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