土曜日の朝、理奈は麻美と待ち合わせて、一緒に星来の家に向かった。
少し早かったかと思ったが、どうやらそうでもないようだ。家に近付くに連れて、星来が父親と一緒に門口に立っているのが見えてくる。
車も既に車庫から出されていて、準備万端といった感じだ。
「おはよう」
「やっと来たわね」
待ちかねたと、星来が溜息を吐く。指定された時間より、数分早いのだが。理奈は喉元まで昇ってきた言葉を、必死で飲み込んだ。
そして気分を切り換えるつもりで、理奈は星来の父親に向かってお辞儀した。
「今日はよろしくお願いします」
「お願いします」
麻美も理奈に倣って頭を下げる。
「こちらこそよろしく」
父親は人当たりの良い笑顔を二人に向け、後ろのドアを開けた。
「さあ、乗って」
「失礼します」
「ますっ」
理奈と麻美が後部座席に、そして星来が助手席に乗り込むと、父親も運転席に乗り込んだ。そして、すぐにエンジンがかけられる。
「ここからだと、何分くらいかかる?」
サイドミラーを直す父親に、星来が問い掛けた。
「二十分くらいかな? すぐに着くぞ」
父親は暫し考えて、軽い口調で答えた。本当に、近くらしい。
「念のためにシートベルト締めてくれよ」
「はいっ」
父親が後ろにいる二人に声をかけてきて、理奈は慌ててシートベルトを締めた。隣を見ると、麻美は最初から装着していたようで、のんびりしている。
父親は二人の様子を見ると、目線を前に戻した。そして、エンジンが回る音が聞こえたと思うと、車はゆっくりと動き出す。
流れ行く景色を眺めながら、理奈は上がっていく速度に身を任せた。
‥NEXT‥
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