街で一番古い喫茶店で、重厚な鐘の音に耳を澄ます。少し遅れて動いた壁掛時計に目をやって、サクは溜息を吐いた。
「もう四時かあ、結局見付からなかったねー」
広場を出てから、ジン達が行きそうな場所を何箇所も巡った。しかし、ジンとリラ、どちらの姿も確認できなかったのだ。
「悪かったな……」
「何で?」
謝るセイに、サクは問い掛ける。
「ほとんど、俺が引っ張り回したようなもんだし……」
しかし、サクは怒ってなどいないし、迷惑とも思っていない。むしろ、
「楽しかったよ」
「え?」
訊き返してくるセイに、サクはにこりとする。
「楽しかった。だから、良いの」
そしてセイを覗き込み、首を傾げた。
「セイは、つまらなかった?」
「そんな事はっ……」
思わず声が大きくなってしまい、セイは慌てて口を抑える。そして回りを気にした後、わざとらしく咳をした。
「……ないぞ」
遅れて来た続きとセイの表情に、サクは思わず吹き出した。
「顔真っ赤」
「うるせー、笑うなよ」
照れているセイの顔が、更に笑いを誘う。
「あはは、無理ー」
「あー、もう! 出るぞ!」
セイは言うと、笑いが止まらないサクの手を引っ張り、レジへ向かう。店員も笑いを堪えている様子で、セイに睨まれると「すみません」と苦笑した。
「あー、笑った」
「だろうな」
店を出てようやく、サクの笑いが収まった。セイは、今日出会ったばかりのサクに、これでもかと言うほど笑われ、少々不機嫌そうだ。
「ごめんねー、セイがあんまり面白かったから」
「謝られてる気がしないぞ」
呆れ顔で、セイがサクを見下ろす。
「ごめんなさい」
そこでサクは、改めて謝り直した。
「よし」
するとようやく、機嫌を直してくれたようだ。セイは口の端を上げて、微笑んでいる。
「そいでは、行きましょうか」
「おー」
セイが返事をすると、二人は並んで歩き出した。
‥NEXT‥
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