天気に恵まれた今日、リラは仕事先で親しくなった青年と、どこかへ行くらしい。一昨日仕事から帰ると、リラは妹のサクに向かって一生懸命報告していた。
これは妹として、見届けなければならないだろう。
「それじゃあ、行って来ます」
「気を付けてね」
サクはリラを送り出すと、窓から外を見た。そして、リラが広場の方向に歩き出したのを確認すると、自室に駆け込んだ。
部屋着を用意しておいたワンピースに着替え、赤い帽子を深くかぶる。
「よしっ」
持ち物を用意して、靴も動きやすい物に履き替える。追跡の準備は万端だ。
「私も出かけてくるねー!」
サクは台所にいる母親に声をかけ、返事を聞く前に家を出た。
暖かい風が吹き抜け、サクの背中を押す。サクは誘われるままに足を進めた。
そして辿り着いた先は、中心に大きな噴水を構えた広場。予定通りであれば、リラは今頃この場所にいるはずだ。
「あれ?」
しかし、どこを見てもリラの姿は見当らない。もしかして、広場を出てしまったのだろうか。
そのような不安を覚えた時だ。
「止めて下さい!」
人込みの中から、聞き覚えのある声が聞こえた。何とか見える位置に移動してみると案の定、リラが二人の男に挟まれている。
二人共、どこか崩れた顔をしており、お世辞にも格好良いとは言えない。
「どうせ暇なんでショ?」
「違います!」
リラは必死に抵抗するが、男達はにやにやしたまま諦めようとしない。
タチが悪い。サクは本気でそう思った。そして、
「助けなきゃ」
人込みを掻き分け、出て行こうとした。
「待て」
しかしそれは、強い力で腕を引かれ、阻止されてしまった。
「誰?」
恨みを込めて振り仰ぐと、声の主を見付けた。そこにいたのは、青い髪の少年。
彼はサクの刺すような視線に溜息を吐いて、更に腕を引き寄せる。
「離してよ」
「行ってどうする? 面倒になるだけだ」
少年は言うと、リラ達を挟んだ反対側を見た。
「今に助けが来る」
「え……」
彼の視線を追って、反対側を見た。そこでは、茶髪で長身の青年が、人込みを掻き分けている。
そして、
「私の連れに、何かご用ですか?」
青年はリラを男達から遠ざけ、冷たい目で二人を睨んだ。
「ジン!」
「大丈夫?」
リラは驚いたように、そして嬉しそうに目を丸くする。
「あれが……」
なるほど、整った綺麗な面立ちだ。あれが、リラが話していた青年だろうか。
青年が男達に何か話すと、二人はあっという間に退散してしまった。そして、群がっていた野次馬も次第にいなくなる。
それに合わせて、サク達も目立たない場所に移動した。
「ねえ、あなたって一体……」
「あれの弟だ。あんたは?」
「私も、妹よ」
やはり、そうだったか。髪や目の色は違うが、鼻や顎のラインが似ていると思ったのだ。
「やっぱりな、似てると思ったんだ」
少年は頷くと、サクを覗き込んだ。
「あんた名前は? 俺はセイ」
「……サクよ」
「サクか、良い名前だな」
セイは歯を見せて笑い、右手を差し出した。
「ここで会ったのも何かの縁だ。とりあえず仲良くしようぜ」
「……よろしく」
サクは躊躇いながら、そっと手を重ねた。
‥NEXT‥
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