ジンに倣って、セイも鞘付きの剣を振るっている。それでも、威力は十分すぎるほどだ。
襲い掛かってくる者を、無駄のない動きで倒してく。
動作が速すぎるせいで、一見すると何もしていないようにも見える。
「ぐへ」
だが、ちゃんと動いている。
「安っぽい声出すな」
呆れた顔で、セイが見下ろす。見下ろされた相手は、驚きと苦痛で顔を歪めた。
「お前、いつの間に動いた……」
「さっきの間」
相手の言うように、セイの動きは常人では確認できない。剣の達人や、極端に動体視力の良い者でなければ、残像すら見えないのだ。
「剣の腕は、私より弟の方が上なんですよ」
「へー。じゃあ俺は、アンタに相手してもらおうかな」
ジンの前に、リーダーの男が歩み出た。右手には、重そうな鉄の棒が握られている。
「私も、弱い訳ではありませんがね」
ジンがにこりとすると、相手は親指で自分の胸を指した。
「俺だって、力じゃ負けねーぞ」
確かに体格は良いし、力では敵わないと思う。
「ですが、力はあまり関係ないと思います」
剣は技だと思うのは、ジンだけだろうか。素直に意見を述べたジンを、リーダーが不愉快そうに睨み付けた。
「勝てりゃあ良いんだよ。おい!」
リーダーの男が人込みに声をかける。
「ヘイ! ホラ、来い」
「ちょ、引っ張らないでよっ」
すると中からだみ声が聞こえて、次いで女の声が聞こえた。途端にセイの動きが止まり、そちらに目をやる。
「……捕まっちゃった」
声の主が登場すると、セイは驚いたように目を見開いた。黒髪の、リラと背格好が似ている少女が、腰パンの男に腕を掴まれている。
「サ……」
「サクっ!」
セイよりも早く、リラが声を上げた。リラは武器屋から身を乗り出し、サクと呼ばれる少女を見詰める。
「知り合いか?」
「妹よ」
なるほど、驚く訳だ。納得する反面、新たな疑問が湧いて来た。
「さっき、弟の方と歩いてたからよォ」
何故、セイがサクの事を知っているのだろう。答えを求めて見やれば、セイは切羽詰った様子でジンを睨む。
「そんな事より、どうするか考えろ」
人質を取られてしまえば、絶対的に不利になる。しかも、十中八九アレを求められるだろう。
「彼女を放して下さい」
「だったら、土下座でもしてもらわないとな」
やっぱり。勝ち誇った顔が、とても腹立たしい。
「それは、私も弟もできかねます」
「じゃあ、返さなくて良いんだな?」
「それは困ります」
困る。だけど、できないのだ。
「自分よりも地位が高いか、自分自身が認めた者でない限り、膝を折ってはいけないと、父から固く禁じられていますから」
「例えば親とか、結婚相手とその両親。それと剣や武術の師匠……それくらいかな?」
セイが付け加えれば、武器屋が何度も頷くのが見えた。そして、観衆もざわめき始める。その様子を見て、セイが視線をジンに向けた。
「なあジン、そろそろバラしても良いんじゃないか?」
「気が進まないけど……仕方ないか」
溜息混じりにリラを見れば、口元を押えて目を丸くしている。目が合った時に武器屋が会釈をしたから、彼が教えたのだろう。サクも同じくだ。
「お前達……いや、君……あ、や」
リーダーに目を戻す。すると彼は、さっきまでの余裕はどこへやら。顔が真っ青だ。
喋る言葉も途切れ途切れで、とても話せる状態ではない。これでは隠す意味がない。
周りの状態からそう判断して、ジンはセイと視線を合わせ頷いた。
「申し送れましたが、私の名はジン。一応、ベーター星国の第一王子です」
「同じく、第二王子のセイだ」
すると、ざわめきは歓声に変わり、その場に膝を着く者も現れた。
これまで態度が大きかった男達も、一瞬で青ざめる。リーダーに至っては、逃げ出そうとしている。
「待てい!」
そこへタイミング良く、警備隊が到着。ジンに喧嘩をしかけた男達を、次々に取り押さえた。
「王子、ご無事で何よりです!」
「ご苦労様」
「ありがとうございます!」
ジンが労いの言葉をかければ、彼等は揃って敬礼した。
‥NEXT‥
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