「そう、そんな事があったの……」
夕食時、私は今日までの出来事を両親に話した。
母は悲しそうに眉をひそめ、父は無表情のまま、酒に口を付ける。
「姉さん達も、胸を痛めているでしょうね」
「どうかしら、華月が話しているとは思えないわ」
親思いの華月の事だ。もしかしたら、両親の悲しむ顔を見たくないがために、まだ何も話していないかもしれない。
「……華月が話さなくとも、兄貴達なら何かしら気付くだろう」
静かに言う父に、私はテーブル越しに身を乗り出した。
「ところで、今回の事はどうしたら良いと思う? 私はまず、誰が犯人か突き止めようと思うの」
「俺を頼るのは、まだ早いんじゃないか?」
苦笑する父に、私は眉を吊り上げる。
「だって、一刻も早く解決しないと華月が可愛そうよ!」
何と言っても、華月は転校してきたばかりで、友達と呼べる人も少ないのだ。
しかし、父は私に答えず、またお酒をあおる。
「可哀想と思うなら、星来が考えてあげなさい。それが一番、華月ちゃんの力になるはずよ」
母が、父の代わりに答えた。
「そういう事だ、お前にも何か考えがあるんだろう? だったらそれを、皆に話してみたらどうだ」
「四人もいれば、大人が考えるよりすごい智慧が出るはずだよ」と、お父さんは微笑んだ。そして、「それでもダメなら、その時にまた話しなさい」とも。
翌朝、四人全員が揃うと、私は昨日両親から言われた事を、できる限り詳しく話した。そして更に、自分の意見を付け加える。
「まずは、犯人を探してみましょう」
「でも、どうやって?」
「それを今から考えるのよ」
麻美の問いに答えると、三人は顔を見合わせた。
「あたしは、姫の意見には賛成。でも、問題は、あたし達に味方してくれる人がいるかどうかだよ」
理奈が腕組みして、足元を睨む。
「確かに、これは私達だけじゃ難しいもんね」
麻美も、難しそうな表情を作り、息を吐いた。
「始める前から悩んでどうするの? まだ、誰にも何も話していないのよ」
悩むなら、壁が見えてからで充分だ。
「まずは、話しやすい人に聞いて見ましょうよ。話はそれから」
考えてみれば、敵ばかりではないのだ。理奈や麻美、そして華月にだって味方はいる。私にも、何人か心強い相談相手がいたはずだ。
「動かなきゃ、何も変わらない。そうでしょう?」
そう言って笑いかければ、三人は俯き加減だった顔を上げて、揃って私を見た。
「……そうだね」
いつも強気な理奈が、一番に明るさを取り戻す。次いで麻美が、そして最後に華月がつられたように笑みを浮かべた。
「さすが星来。前向きだなぁ」
ふふ、と小さな声で華月が笑う。その様子に、私は少し安堵して、自然と目を細めていた。
‥NEXT‥
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