まずは聞き込みを。そう決めて、私達は心当たりのある人に、片っ端から訊ねて廻った。
しかし、その大半から「何も知らない」という回答が帰ってきて、残りの人達からも、これといった情報は得られなかった。
「予想していたとはいえ、へこむわあ」
「お疲れー」
脱力してしゃがみ込む私の頭を、理奈が軽く叩く。
「すぐに結果は出そうにないけど」
突然話し出した理奈を振り仰げば、彼女は穏やかに口元を綻ばせている。
「何人かからは、協力が得られそうだよ」
「本当に?」
それが本当なら、これほど心強い事はない。
「さすが、理奈ね」
「まあね。……ああ、どうだった?」
心底感心して言うと理奈は口元で笑い、それから廊下の向こうに目をやり、手を挙げた。
振り向いてみると、華月と麻美が職員室から戻って来た所だった。
「びみょーな反応でした」
「私もー」
しかし、彼女達からも嬉しい知らせがあった。
「あのね、他の学年には、意外と味方が多いみたい」
「六年生の人に、頑張ってねって言われちゃった」
嬉しそうに報告する彼女達が、本当に微笑ましい。この二人が笑っていると、こちらまで嬉しくなってくる。
「あとね、斎藤君が協力してくれるって」
「へー、大五郎が?」
二つ年上の相手を呼び捨てにして、理奈が訊ねた。その表情は、どこか意外そうだ。
「うん。妹さんが私達と同じ学年だから、何か知ってるかもーって言ってたわ」
「ふうん、あの人がねえ」
「何かあるの?」
理奈の言い方が、何かを含んでいるように聞こえる。私が首を傾げると、彼女は首を振って「べつに」と答えた。
「ところで、妹って誰かしら?」
「訊こうと思ったけど、先生に呼ばれちゃって……」
残念そうに、華月が俯いた。それでは仕方がない。
「でも、協力してくれるんでしょ? なら、それで充分」
理奈が、励ますように華月の背中を叩く。
「そう言ってくれるだけでも、励まされるんだから」
ね、と理奈が笑いかける。それを受けた華月も、つられたように笑みを浮かべた。
「そうよね」
頑張って。そう言ってもらえるだけでも、随分と勇気付けられる。
例え、クラスで除け者にされようと、この一言でどれだけ元気になれるだろうか。
「よし、頑張ろう!」
私が、両手を握って声を上げる。すると三人は一瞬驚いて、それから揃って拳を振り上げた。
「おー!」
‥NEXT‥
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